日 時 : 平成15年9月29日(月)16:00〜18:00
場 所 : 神戸市中央区下山手通り1丁目生田神社内「生田会館」
JR三宮駅より徒歩5分 TEL078(391)8765
議 題 : 「瀬戸内海洋文化の将来と発展」
・ 泊地と観光「バースシュアリング(泊地分割利用)構想」の再考
・ 港・公共泊地の新しい運用と地域の活性
・ こんぴらさん『平成の大遷座祭』へ向けて
2003年9月30日 神戸新聞
瀬戸内の活性化論議
漁師などの団体 神戸で会議
観光などで多くの提案
西日本の漁師やレジャー産業の関係者らでつくる民間団体「アンカレッジネットワーク」(事務局=姫路市・妹尾達樹会長)が29日、神戸市中央区の生田神社会館で「海洋文化の将来と発展」をテーマに会議を開いた。会員以外の大学教授や県職員らも参加し、瀬戸内の活性化について活発な議論が交わされた。
同団体は、自然を生かし、瀬戸内海地域の活性化を考えようと、1989年に設立。西日本各地で会議を開いており、神戸での開催は初めて。ヨットレースや国際イベントも行ってきた。この日は、近畿、九州などから50人が集まり、観光などの面から瀬戸内の将来について話し合った。「かつてあった砂浜が失われてきた。先ず環境面を考える必要がある。」「ヨットなどの停泊地は子供の教育の場として活用できる」など、多くの艇あんた出された。
・・・・・・・神戸会議 まとめ 妹尾達樹・・・・・・・
平成15年10月吉日
瀬戸内アンカレッジネットワーク 神戸会議
出席者 各位 殿 瀬戸内アンカレッジネットワーク
会長 妹尾 達樹
瀬戸内アンカレッジネットワークの結成15年。この間、瀬戸内海各地においての当ネットワークが主催、あるいは後援する数々の催しや会議が開催されましたが、それもほぼ一巡しました。
この節目を記念して開催しました「瀬戸内アンカレッジネットワーク神戸会議」には、会員のみならず、オブザーバーとして学識経験者、関係官庁、各関連企業、団体、レジャー関係者、多数のご臨席をいただき、どうもありがとうございました。おかげさまで、大変有意義な会議が開催できましたこと、ここに心より深く、感謝の意を表し、厚く御礼申し上げます。
当日は、会員諸氏をはじめ、オブザーバーの皆様方より、多くの意見が交わされ、内容のある会議を持つことができました。もっと意見を延べたかったという会員の方々、もっとアドバイスやご意見を発言したかったというオブザーバーの方々に対し、会議の議論が白熱する中、時間の都合上、やむをえず閉会しましたことお詫び申し上げます。
本神戸会議におきましては、その議題の一つ一つがご出席いただいた皆様方の、日ごろの熱い思いが強く感じられ、大変熱心に論議いただけましたことが印象的でした。
会長を預かる私としましても、そのテーマの一つ一つ重みを、ひしひしと実感している次第でございます。
会議にご参加いただきました、皆さんの貴重なご意見、アドバイスを今後の本会運営への大きな支えにしてゆきたいと思っております。
本来なら、皆様に会議のまとめや、今後の活動方針について、会の終わりに申し上げるべきでしたが、本日ここに瀬戸内アンカレッジネットワーク神戸会議のまとめとして、ご報告申し上げたく思います。
このたび、神戸会議の開催に多岐にわたってご尽力いただきました、アンカレッジネットワーク神戸地区の皆様方に厚く御礼申し上げます。
瀬戸内アンカレッジネットワーク神戸会議の報告
21世紀の「瀬戸内文化構想2001」の提唱のもと、プレジャーボート等での環瀬戸内海クルージング時代に対応する錨泊地網計画「瀬戸内アンカレッジネットワーク」の結成15周年を迎え、今日までの活動の集約と、今後への活動方針を示唆するため、関連する行政、団体、個人をオブザーバーに招き、以下のテーマのもとに会議を開催した。
開催日時 平成15年9月29日(月)
午後4時 〜 午後6時
開催場所 神戸市中央区 「生田会館」
テーマ
「瀬戸内海洋文化の将来と発展」
・ 泊地と観光「バースシュアリング(泊地分割利用)構想」の再考
・ 港・公共泊地の新しい運用と地域の活性
・ こんぴらさん『平成の大遷座祭』へむけて
船を利用し海路を巡る「クルージング」は、まだわが国においては、一般的ではなく、ごく一部の人の特殊な活動として捉えられている。
しかし、現実には、余暇の増大やマリンレジャーの普及とともに、国民のニーズも高まり大型客船での世界一周クルーズから近距離の自家用船でのクルージングに至るまでその愛好者は増加しているのは確かである。
なかでも瀬戸内海路は古くから人々の交通の場として開け、それに伴い各地の港が栄え、港町も賑わってきた。そして時の流れとともに、海路や港町はその機能が大きく変貌し、今や新しい多くの文化活動(観光、教育、スポーツ等)の場としての必要性が強く求められてきている。
今回の会議でのテーマは、まだ、わが国では新しい文化「クルージング」における瀬戸内海沿岸での停泊地(港、アンカレッジ)の新しい活用、運用方法について、またその新しい「海の文化活動」がもたらす、地域の活性化と波及効果など、広い視点から捉えた中で会議が進められた。
瀬戸内各地のプロシーマン、アマチュアシーマンで集う瀬戸内アンカレッジネットワークのメンバーの活動を軸に、これらを健全に推進するにはどのようにすればよいか、をテーマに議論した。
最初に、広島大学総合科学部助教授で観光、地理学を専門とされるフンク・カロリン博士により、観光(クルージング)についての考え方、また博士の出身地である、ドイツ周辺での自然の中での海や島、水辺の過ごし方についてが述べられ、博士の持つ自然観あふれる説明の中で海路を通じ島や、港町などを観光する素晴らしさや、海からクルージングなどで立ち寄ることができる港や、泊地の必要性が取り上げられた。
また、観光とは「非日常性の中での活動することである」ことが延べられ、ヨーロッパと、日本とのその意味の価値観の違いが分かりやすく説明があった。これからの瀬戸内でのクルージングにおいても「環瀬戸内の観光を含めた文化」に視点をおき、単なるヨット遊び、ボート遊びだけという位置付けではなく、多くの市民がその活動の必要性、そしてその活動がもたらす文化や、波及効果を見出せるような導入や受け入れを考えてゆくことが必要であることが強く感じられた。これから新しく求められる「観光」というジャンルでアンカレッジネットワークの活動への大いに参考になる意見であった。
前回の総会において懸案だった「バースシュアリング構想」は、クルージング時代とはいえ、瀬戸内の遠隔地までのクルーズは、日ごろ多忙なセーラーたちは、行きたいけれど実現できない。当ネットワークでそのセーラーたちの一時停泊地での短期間の受け入れを行い、そしてクルージングの活性と漁港やマリーナなどの遊休施設の有効利用を考え、そして環瀬戸内海の観光などの活性を考え提案された構想である。今回のテーマである「観光と泊地」における位置付けの高い課題として議題に取り上げた。
今日まで、日本のヨット界において、数々の事業や団体の要人として活躍され、古くから瀬戸内でクルージングを経験されてこられた神戸商船大学 松木哲名誉教授より、
「以前は、ヨット等でさほど長期のクルージングを楽しむものはいなく、せいぜい一泊程度の航海が主だった。だが、長期のクルージングにおける停泊は、必ずその乗組員により管理されるのが原則であり、誰かがその船に残り船を守るのが原則である。船を預けて帰るということは、よほどの安全な停泊地があり、信頼関係が持てなければ行ってこなかった。また、このような構想においては、それを預ける側、預かる側との契約等においても、責任問題が発生することを回避できないため、よほど注意し、検討しなければならい」
と、構想の基本的な事項について意見が述べられた。
松木名誉教授からのアドバイスは、船を運用する者における基本的なシーマンシップであると考える。この構想は、基本的なシーマンシップを持ったネットワーカーたちの、一方向からの考え方で持たれてきた構想だが、この「バースシュアリング」が不特定多数を対象とした事業として展開した場合、発生する諸問題をいかに解決して行くかが今後の大きな課題になる事が指摘された。
今後、この計画を進めてゆくため、松木名誉教授からのアドバイスを生かし、法的なレベルでの検討、各地での利用者と事業者間との責任と契約等について再度詳細に検討してゆきたい。
そしてこの構想の実現には、この構想を理解し、活用する人々のシーマンシップが、大きく左右されることが強く感じられた。今後、ネットワークメンバーたちによる、試験的なバースシュアリングの実施を含め、数々のケースを想定した研究を行い、この構想の実現に邁進したい。
会員、オブザーバーの発表を以下に記す。(抜粋)
◎ クルージングでの、港での停泊は、長期ではなく陸上施設利用時に一時係留をすることも多分にある。立派な桟橋やマリーナ等を必要としているのではなく、そこに海から訪れる人々を受け入れられる、簡易な錨泊地や係留施設があるだけでも瀬戸内クルージングの活性につながり、クルージングで訪問する人々(観光客)を対象とした地域の産業の活性にもつながる。現に、家島の男鹿島の民宿や食堂では、その発着地の条件は良くないが、それが、頻繁に活用されて、観光やレジャー活動に大きく役立っている。
また、瀬戸内中央部のしまなみ海道等の島嶼部などでは、架橋された道路網が整備され、フェリーや連絡船が廃止され、本来の目的で活用されていない立派な桟橋が多く見かけられる。既存の施設の一部でも活用し、桟橋への一時係留ができるように受け入れできるなら、もっと海の道のルートが普及できるだろうし、瀬戸内の海からの観光も充実できる。
◎ 仕事柄、海辺の町や村に行くが、クルージングやヨット、ボートなどで港を利用したいと思っているのは、ごく一部の限られた人々であり、各地の港に面した人々の多くは、その特別な人たちの海からの受け入れをしたいと考えていないのではないか。もっと瀬戸内全体を良くするためのネットワーク作りが必要ではないか。
海からの観光云々と言われるが、自身が島育ちで、大好きな瀬戸内だが、砂浜も減少し、コンクリートで囲まれ、決して観光等の条件が良いとも思われない。
停泊地網作りやクルージングの活性とかだけでなく、環瀬戸内のみんなが一体となって、自然保護や環境保全を考え、その中から活動を起こすべきではないか。
◎ 海は誰のもの? みんなの海のはずという想いで、瀬戸内中央部の島嶼部において、自然の中での数々の体験活動を行っている。自分の力で海に出て、自分の身は自分で守ることを原則にした自然教室で、手こぎ舟、カヤック、セールボート等の活動を主に多くの青少年たちのを指導をしてきた。
近年、各地からの修学旅行の受け入れをはじめ、学校、社会教育などでも注目され、多くが島を訪れ多忙になってきている。
今年より、小型船舶等の検査制度等が変わり,
一部の小型、小馬力の動力船が、免許や検査なしで、子供でも扱えるようになってきている。瀬戸内中央部の島嶼部においては、島々も点在しており、沿岸各地より、島伝いに子供達でも行き来することも十分に考えられる。
動力に頼り、海について何の経験もなく、知識もない子供達を含め多くが、このような活動をしだすと、海はたいへん危険な状態になってくると思う。
現在、青少年教育の場として、海や港を利用しているが、今後、自然教育、スポーツ性の高いカヤックや手こぎ船での教育が、「海は危険な場所」となって、それどころではなくなってくる恐れがある。船や沿岸周辺を熟知していない不特定多数の子供たちがどのような動きをしだすかが心配だ。
◎ 瀬戸内中央部の地域の人々とともに歴史ある港町の町並み保存の活動をしている。海路が主であった昔から、港町として活用されてき、世界遺産として取り上げたい、古き良き港町の景観を残す港町だが、モータリゼーションの時代で、その景観や町並みが無視された道路計画がなされ、実行されようとしたが地域の人々の運動が実り、計画は中止された。
現在、海路を活用し、町並み保存をする近隣の地域の人々と協調し、瀬戸内という素晴らしい背景のもとで、地域の振興を目的とした数々の文化活動のネットワーク「港町ネットワーク」を開設している。海からの来訪者の行き来もできるよう、廃止された連絡船が発着していた公共桟橋の利用を管理者に問い合わせたところ、海からの来訪者の受け入れの、可能性も出てきた。
◎ 国際貿易港の港町として栄えてきた町の商店街で事業を営んでいる。港町本来のウオーターフロントを生かした活性化した街づくりが出来ないものだろうか。カナダのバンクーバーやアメリカのシアトル、サンフランシスコのような、大きな貿易港内でも多くのレジャー船が行き交い、市民のレクレーションの場としても誰もが気軽に港内や水際を楽しんでいる。このような環境の港作りこそが今後新しい町作りへとつながり、港町が活性化すると思う。
◎ 瀬戸内東部の島で漁業や渡し舟をしている。今年の夏休みに大勢の都市部の子供達が一週間無人島でサバイバルキャンプを行った。子供達にとっては、日ごろの生活では体験できない自然の中での貴重な経験であり、素晴らしい体験が出来た。このような体験をすることは人間教育上たいへん重要なことだと考える。学校の教室では学べない実体験ばかりであり、生きて行くことを身をもって学べる大切な機会でもあるとも思う。今後、指導者の育成をはじめ、指導者のためへの書籍やマニュアル作りを整備することが必須だが、このような体験を学校教育のカリキュラムに取り組まれてゆくことを願いたい。
◎ 行政(県)による、プレジャーボートの公共泊地の建設に伴う、その運用方法について。ボートパークは、河川や港内の不法係留対策事業が目的として、建設される泊地であるが、市民の憩いの場、ほかの地域からやってくるボートの一時係留の場として活用できるはずで、作りっぱなしではなく、もっと上手に運用する必要がある。
◎ 国の海事関係の行政に携わるが、行政区分上、職務に携わるものも、現状が十分把握できておらず、まだまだ未知の分野が多い。今後このような話し合い等に積極的に参加し、活動を理解し、海事行政の参考にしてゆきたい。
◎ 金刀毘羅宮禰宜、科野斎氏より金刀毘羅宮における平成の大遷座祭についての説明が述べられた。
来年平成16年に、海の神様、金刀毘羅宮の御本殿の大改修にともなうご神体の一時移動、遷座際がとり行われる。この大祭は33年に一回の記念すべき大祭でもあり、15年前に金毘羅宮で結成された本ネットワークにおいても、ぜひ、新しい金毘羅さんとともに、新たなネットワークとして今後活動を展開されることを期待したい。と伝えられた。
また、大改修に伴う御本殿の天井の格子「木地蒔絵」の寄進についての説明と、サンプルの檜の木地にプラチナで描かれたサンプル蒔絵が参加者全員に披露された。
来年11月以降には、金刀比羅宮における数々の大祭に伴う行事も一段落するので、ニュー金毘羅さんのもとで、瀬戸内アンカレッジネットワークの新たな会議を開催されることが決定した。
終わりに
「瀬戸内文化構想2001」のもと、環瀬戸内海で活動する人々の熱い情熱と地域愛を柱に数々のことを模索しながら進んできた本ネットワークも、15年という月日の流れを迎え、大きな節目を迎える時が来たと実感しております。
これまでの模索してきた事を、今後は社会性のある現実的な事業として展開してゆく事がこれからの本ネットワークの大きな課題でもあり、役目でもあると考えております。
今回の会議において、多方面から数々の御意見やアドバイスを賜り、おかげさまで私たち「瀬戸内アンカレッジネットワーク」が、結成来から目的とした趣旨や数々の事業へアプローチは間違えていなかったことを確信することができました。今後、よりこの目的に邁進してゆくためにも、また当会をより現実的な働きのできる組織にするためにも、新たな方針と気持ちを持って取り組んで行きたいと決意しております。個々が目的とするおのおのの分野を再度、煮詰め、法的な諸問題、手続きを踏まえたうえ、社会的にも組織力を持った団体として、事業活動が推進して行けるネットワークに成長してゆけることを望んでおります。
この15年間で社会情勢も大きく変わり、環瀬戸内海での振興策を考える数々の団体や組織が結成され、多くの分野で活動が開始されてきています。私たちネットワークも多くの活動団体や組織との協調、協力を惜しまず、より多くの方々にも賛同いただけるネットワークとして、活動を継続して行きたいと思っております。
来秋、ネットワーク誕生の地、金刀比羅宮の"ニューこんぴらさん"に戻り、お膝元で迎える次回の会議には、ぜひ、新たなる方針と組織を打ち出し「ニュー瀬戸内アンカレッジネットワーク」として新たな船出をしてゆきたいと思っております。
どうか皆様今後とも「瀬戸内アンカレッジネットワーク」に宜しく御賛同いただき、御支援、御鞭撻くださいますよう宜しくお願い致します。
瀬戸内アンカレッジネットワーク
会長 妹尾 達樹